冬の入浴中の事故には、暖かい部屋と寒い脱衣所・浴室の温度差がかかわるとされています。家の側でできる対策の出発点は、家の中の温度差を測ることです。この記事では、温度の測り方、窓・断熱・暖房・トイレ・段差を効く順番に直す方法、入浴のときの工夫、費用の目安、令和8年度に使える制度を、見附市に本社を置く施工会社の視点でまとめました。

ヒートショックと入浴中の事故|統計で確かめる

急な温度の変化で血圧が大きく上下し、体に負担がかかることを、一般に「ヒートショック」と呼びます。政府広報オンラインの説明では、寒い脱衣所や浴室で血管が縮んで血圧が上がり、湯船で温まると血管が広がって血圧が下がります。この急な変化で一時的に意識を失うことが、浴槽で溺れる事故の原因の一つと考えられています。消費者庁は、熱いお湯に長くつかって体温が上がることによる意識障害も、原因に挙げています。

令和7年の人口動態統計(確定数)

厚生労働省が令和8年9月30日に公表した、令和7年の人口動態統計(確定数)の数字です。

項目(令和7年) 人数
浴槽で溺れて亡くなった方(浴槽内での溺死及び溺水と、浴槽への転落による溺死及び溺水の合計) 8,031人
うち65歳以上 7,631人(約95%)
発生した場所が家庭だった「浴槽内での溺死及び溺水」 7,373人
参考:交通事故で亡くなった65歳以上の方 2,019人

出典:厚生労働省「人口動態統計(確定数)」令和7年 上巻 死亡 第5.31表・第5.35表

亡くなる方の約95%が65歳以上で、多くは家庭の浴槽で起きています。政府広報オンラインによると、こうした事故は毎年11月から4月にかけて多く、持病や前兆がなくても起こるおそれがあります。家の側でできるのは、部屋と部屋の温度差を小さくすることです。そのために、まず今の家の温度差を測ります。

まず家の温度差を測る|同じ時間に、床の近くも

家の中の温度差は、体感だけでは分かりにくいものです。消費者庁も、部屋どうしの温度差を温度計で「見える化」するよう呼びかけています。

目安にしたい温度

WHO(世界保健機関)の「住宅と健康に関するガイドライン」(2018年)は、寒い季節の室温として18℃を、一般の人の健康を守る安全でバランスのよい温度として示しています(強い推奨)。高齢の方や子ども、持病のある方には、より高い室温が必要な場合があるとしています。寒い季節のある地域では、既存の住宅にも断熱改修を行うよう勧めています(条件付きの推奨)。

国土交通省が支援する調査の中間報告(平成31年1月)では、部屋どうしの温度差が大きく、床の近くの温度が低い住宅ほど、住む人の血圧が高いという知見が示されました。居間や脱衣所が寒い住宅では、熱めのお湯での入浴が多いことも報告されています。この調査は、居間・寝室・脱衣所の温度を、床から1mの高さと床の近くで測っています。

測り方

  1. 温度計:同じ種類のものを、測る場所の数だけそろえます。最高・最低の温度が残るものだと、朝の冷え込みも分かります。
  2. 場所:居間、寝室、廊下、脱衣所、浴室、トイレ。直射日光や暖房の風が当たらない所に置きます。
  3. 高さ:床から1mくらいと、床の近くの2か所です。
  4. 時間:冷え込む朝と、お風呂に入る時間帯。暖房はふだんどおりに使います。
  5. 記録:居間を基準に、ほかの場所との差を書き出します。

チェックポイント

  • 脱衣所・浴室・トイレ・廊下に、18℃を下回る場所があるか
  • 居間との差がいちばん大きいのはどこか
  • 床の近くと床から1mで、温度が大きく違わないか
  • 窓のガラスが1枚か(2枚なら縁に空気の層が見えます)、枠がアルミか樹脂か
  • 冬の朝、窓や枠に結露や霜がつくか。足元にすき間風を感じるか

差がいちばん大きい場所から手を入れます。

効く順番に直す|窓・断熱・暖房・トイレ・段差

今日からできるのは、入浴前に脱衣所と浴室を暖めることです(入浴のときにできる工夫)。工事で直すなら、熱の逃げ道をふさいでから暖房を入れる順番が効きます。窓と床・壁・天井を先に整えると、同じ暖房でも暖まりやすく、冷めにくくなります。段差と手すりは、浴室やトイレの工事と同時に行うと一度で済みます。

① 脱衣所・浴室の窓

どこを見るか

  • ガラスが1枚か、複層ガラス(ガラスの間に空気などの層があるもの)か
  • 枠がアルミか樹脂か
  • 窓の下に冷たい空気が下りてこないか、結露や霜がつかないか

何をするか

今の窓の内側にもう一つ窓をつける「内窓」、ガラスを断熱性の高いものに替える「ガラス交換」、今の枠の上から新しい枠をかぶせる「カバー工法」の窓交換があります。窓は、断熱材の入った壁より熱が逃げやすく、部屋を使いながら工事できることが多いため、最初に見直します。浴室の窓は、浴室で使える製品か、掃除しやすいかも確かめます。選び方は「窓の断熱リフォーム|内窓・樹脂サッシで結露と寒さを止める」にまとめています。

② 床・壁・天井の断熱

どこを見るか

  • 浴室がタイル張りの在来工法(現場で床や壁をつくった浴室)か、ユニットバス(工場でつくった部材を組み立てる浴室)か
  • 脱衣所の床が冷たくないか、沈むところがないか
  • 床下の点検口や床下収納から、床の裏に断熱材が見えるか
  • 天井の点検口から、天井裏に断熱材が敷かれているか
  • 配管の穴や壁のすき間から、冷たい空気が入っていないか

何をするか

浴室を入れ替えるときは、床・壁・天井・浴槽に断熱のある仕様を選び、まわりの壁や床下にも断熱材を入れます。脱衣所は床下と天井裏に断熱材を入れ、外に面した壁は内側をはがして断熱材を入れる方法があります。すき間もふさぎます(気密)。床を張り替えるときは、浴室との段差も一緒に直せます。考え方の全体は「見附市の断熱リフォーム|費用・効く順番・気密の話まで」をご覧ください。

③ 脱衣所・浴室の暖房

どこを見るか

  • 脱衣所にコンセントがあるか
  • 浴室の換気扇を、暖房付きのものに替えられるか
  • 分電盤に、暖房用の回路を足す余裕があるか
  • 今の暖房器が、脱衣所や浴室で使ってよい製品か(取扱説明書で確認)

何をするか

浴室の天井や壁に浴室暖房乾燥機(暖房・換気・乾燥ができる機器)を付け、脱衣所には壁掛けの暖房機や床暖房を付けます。必要なら、専用のコンセントを設ける電気工事をします。①と②を先に済ませておくと、暖まるまでが早く、止めたあとも冷めにくくなります。

④ トイレ

どこを見るか

  • 外壁に面しているか、窓のガラスと枠は何か
  • 床や便座が冷たくないか
  • 寝室からトイレまでの廊下の温度(夜中の移動も、暖かい部屋から寒い場所へ移る点は同じです)
  • 夜の足元は明るいか、コンセントはあるか

何をするか

窓の断熱、床と壁の断熱、小型の暖房機や暖房便座、人の動きで点く足元灯の設置などです。暖房機や温水洗浄便座には、コンセントの増設が必要なことがあります。

⑤ 段差・手すり

どこを見るか

  • 脱衣所と浴室の出入口に段差があるか、浴槽のふちが高くてまたぎにくくないか
  • 洗い場の床が、ぬれると滑りやすくないか
  • 浴槽の出入り、洗い場やトイレでの立ち座りに、つかまる場所があるか
  • 浴室やトイレの扉が内側に開くか(中で倒れた人が戸をふさぐと、外から開けにくくなります)

何をするか

出入口の段差を小さくする、手すりを付ける、滑りにくい床材に替える、開き戸を引き戸などに替える工事です。政府広報オンラインは、浴槽から出るときは手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がるよう呼びかけています。これらは、介護保険の住宅改修の対象となる工事の種類にも入っています(使える制度)。手すり1本から頼める工事は「小さなリフォームから始める」、冬の住まい全般の備えは「新潟の冬の家対策まとめ」をご覧ください。

入浴のときにできる工夫

工事の前でも、入浴のしかたで体への負担を減らせます。政府広報オンライン(取材協力:消費者庁)と消費者庁の呼びかけを整理しました。

  • 入浴前に脱衣所と浴室を暖める:浴室に暖房がなければ、湯船にお湯をはるときにシャワーから給湯する、沸いたらよくかき混ぜて湯気を立て、ふたを外しておく方法が紹介されています。
  • 湯温は41℃以下、つかる時間は10分までを目安に:42℃のお湯に10分入ると体温が38℃近くまで上がり、意識障害を起こしやすくなるとされています。温度計やタイマーを使います。
  • 浴槽から急に立ち上がらない:手すりや浴槽のへりを使って、ゆっくり立ちます。
  • 食後すぐ、飲酒後、薬を飲んだあとの入浴は避ける
  • 入浴前に水分をとる:入浴中も、のどが渇いたらこまめにとります。
  • 入浴前に、同居する家族にひと声かける:家族は、入浴が長い、音がしない、急に大きな音がしたなどの異変に気づいたら、ためらわずに声をかけます。
  • 湯船で意識がもうろうとしたら:気を失う前に、お湯を抜きます。

血圧が不安定な方や、お風呂でめまいや立ちくらみを起こしたことのある方も、注意が必要とされています。体調に不安があれば、かかりつけの医師にも相談してください。

工事費の目安|浴室とトイレ

建物の状態と仕様で変わる目安です。床下や壁の中の傷み、配管の状態、選ぶ設備で上下します。現地を見てから総額でお伝えします。

浴室

工事の内容 おもな中身 費用の目安 工期の目安
浴槽のみ交換 浴槽の入れ替え 約15〜30万円 1〜2日
部分リフォーム 床・壁・浴槽 約30〜60万円 3〜5日
ユニットバス交換 今のユニットバスを新しいものへ 約60〜120万円 3〜5日
タイル張りの浴室からユニットバスへ タイルの浴室を解体してユニットバスに 約80〜180万円 5〜7日
バリアフリーを含む全面改修 段差の解消・手すり・暖房を含む 約100〜200万円 5〜7日

トイレ

工事の内容 おもな中身 費用の目安 工期の目安
手すりの設置のみ L字型の手すり1本と、滑りにくい床 約3〜5万円 半日
便器の交換のみ 温水洗浄便座付きのトイレへ 約10〜20万円 1日
内装と便器の交換 床・壁・便器を新しく 約20〜35万円 2〜3日
バリアフリーの全面改修 段差の解消・手すり・暖房・設備の交換 約40〜80万円 3〜5日
和式から洋式への全面改修 床下からつくり直す 約50〜100万円 5〜7日

工期中は、その浴室やトイレが使えない日があります。窓や床・壁・天井の断熱を加える場合は、その分の費用と日数が増えます。家全体の費用の考え方は「見附市の中古住宅リフォーム費用|相場と総額シミュレーション」をご覧ください。

使える制度(令和8年度時点)

浴室・脱衣所・トイレの工事で使える可能性のある制度です。年度ごとに条件が変わり、予算に達すると受付が終わります。ここに書いたのは令和8年度(2026年度)に公表されている内容です。最新の条件は各窓口でご確認ください。診断のときにも一緒に確認します。

制度 対象になる人・工事 おもな条件 窓口
介護保険の住宅改修 要支援・要介護の認定を受けた方。手すりの取付け、段差の解消、滑り防止などのための床材の変更、引き戸などへの扉の取替え、洋式便器などへの取替えと、それに付帯する工事 支給限度基準額20万円(自己負担は所得に応じて1〜3割)。要介護度が3段階以上重くなったときや転居したときは、改めて20万円まで。工事の前に、ケアマネジャーなどが作る理由書や見積書を添えて申請 市町村(見附市は健康福祉課)
見附市高齢者障害者向け住宅整備補助事業 要支援・要介護の認定を受けたおおむね65歳以上の方など(世帯全体の前年収入600万円未満)。持ち家での段差の解消・手すりの設置、和式から洋式トイレへの変更など 対象経費(30万円まで)に、世帯の課税状況に応じた補助率(生活保護世帯は全額、所得税非課税世帯は4分の3、その他の世帯は半額)をかけた額。介護保険の対象部分は除く。世帯で生涯1回。工事の前に申請 見附市健康福祉課 高齢福祉係(0258-61-1350)
見附市 断熱改修等リフォーム事業補助金 ヒートショック対策につながる工事(窓・外壁・屋根・天井・床の断熱、浴室や脱衣所の固定式暖房器、床暖房)。市内に本店・支店などがある業者の施工 40万円以上の工事で費用の10%(上限20万円)。令和8年度の受付は終了(2026年9月29日時点の市の案内)。次年度は市の発表を確認 見附市都市環境課 都市・住宅政策係
みらいエコ住宅2026事業(国) 平成28年12月31日以前に新築された住宅。外に面した窓がある居室1つ(居間・寝室など。浴室・洗面室・トイレ・廊下は居室に入らない)で、その部屋の外に面した窓・ドアをすべて断熱改修し、窓の性能と新築時期に応じて外壁・屋根(天井)・床の断熱改修を組み合わせることが条件(窓の性能が高ければ要らない組み合わせもある)。同時に行う手すりの設置・段差の解消、高断熱浴槽、節水型トイレ、浴室乾燥機なども対象 上限は建築時期と工事の組み合わせで1戸40万〜100万円。着工と、工事完了後の交付申請は2026年12月31日まで。予約は11月16日まで(予算に達し次第終了) 登録事業者が申請
先進的窓リノベ2026事業(国) 既存住宅の窓の断熱改修(ガラス交換、内窓、外窓交換。同じ契約で行うドア交換も含む) 補助額は製品の性能と大きさで決まり、1回の申請で5万円以上、上限1戸100万円。着工と、工事完了後の交付申請は2026年12月31日まで。予約は11月16日まで(予算に達し次第終了) 登録事業者が申請
  • 手続きの順番:介護保険と市の制度は、工事の前の申請が必要です。国の2事業は、登録事業者と契約して工事をし、事業者が申請します。工事を頼む方が直接申請することはできません。
  • 重ねて使えないことがある:国の制度どうしは、同じ工事に重ねて補助を受けられません。見附市の住宅整備補助も、介護保険の対象部分を除いて助成されます。どの工事をどの制度に振り分けるかは、診断のときに工事の分け方から確認します。
  • 時期:国の2事業は、工事完了後の交付申請まで含めて2026年12月31日が期限です。

補助金全般は「見附市で使える住宅・リフォーム補助金まとめ」もご覧ください。

よくある質問

Q. 浴室暖房乾燥機を付ければ、窓や断熱の工事はいりませんか

暖房だけでも、入浴前に浴室の温度は上げられます。ただ、窓や壁から熱が逃げやすい浴室では、暖まるまでに時間がかかり、止めると早く冷えます。測った温度や結露、床の冷たさを見て、窓や断熱とあわせて考えるのが効率的です。

Q. 介護保険の住宅改修は、工事が終わってから申請できますか

原則は工事の前の申請です。厚生労働省の資料では、やむを得ない事情がある場合に限り、工事のあとの申請が認められています。まずケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してから、工事に入ってください。

Q. 離れて暮らす親の家のことを、子どもが相談してもいいですか

構いません。温度の測り方や直す順番は、ご家族と一緒に確かめるのが近道です。介護保険の住宅改修はご本人の申請で、家の持ち主がご本人でない場合は、所有者の承諾書が必要です。

Q. 冬のあいだでも工事はできますか

内窓の取り付けや手すりの設置、浴室の入れ替えなど、室内の工事は冬でもできます。国の補助金を使う場合は、2026年12月31日までに工事を終えて申請する必要があるため、早めにご相談ください。

まとめ

  • 令和7年に浴槽で溺れて亡くなった方は8,031人で、約95%が65歳以上。多くは家庭の浴槽で起きています。
  • まず、同じ時間に部屋ごとの温度を、床から1mと床の近くで測ります。目安は、WHOが示す寒い季節の室温18℃です。
  • 直す順番は、窓、床・壁・天井の断熱、暖房、トイレ、段差・手すり。今日からできるのは、入浴前に脱衣所と浴室を暖めることです。
  • 入浴は、湯温41℃以下、つかる時間は10分までを目安に。急に立ち上がらず、家族にひと声かけます。
  • 介護保険の住宅改修、見附市の住宅整備補助、国の2事業(2026年12月31日まで)が使える可能性があります。

温度差や段差が気になる方は、まず温度計で測ってみてください。測った数字をもとに、どこから直すと効くか、使える制度はどれかを一緒に整理します。ご相談と現地の確認は無料です。中古住宅の購入を考えている方は、購入前の無料診断で窓・床下・水まわりなどを確認し、必要な工事と補助金の対象をお伝えします。相談から引き渡しのあとまで、代表の坂上が一貫して担当します。見附市に本社を置き、本社から車で約1時間の範囲でお受けしています(対応エリアの一覧は会社概要)。ご相談はお問い合わせページから、LINE・お電話(0258-88-9722、毎日9:00〜18:00)でも承っています。

参考:令和7(2025)年人口動態統計(確定数)の概況・人口動態調査 確定数 死亡の統計表(e-Stat)(厚生労働省)/年末年始、高齢者の事故に注意しましょう!(消費者庁、令和7年12月23日)/コラムVol.12 高齢者の事故―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―(消費者庁、令和6年12月19日)/交通事故死の約3倍?!冬の入浴中の事故に要注意!(政府広報オンライン、2025年11月12日)/WHO Housing and health guidelines(WHO、2018年)/断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)(国土交通省、平成31年1月24日)/福祉用具・住宅改修の概要・サービスにかかる利用料(厚生労働省)/介護保険以外のサービス(市単独事業)について・見附市高齢者障害者向け住宅整備補助事業のチラシ・断熱改修等リフォームを補助します・住宅関連補助事業に関する申請状況(見附市)/みらいエコ住宅2026事業 対象要件の詳細(リフォーム)(国土交通省)/先進的窓リノベ2026事業 対象要件の詳細(環境省)